部下の成長を促す上司とは。助言が成長を阻む理由と助言しないための心構え

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部下や後輩に良かれと思って助言をしたつもりが、なかなか受け入れてもらえなかったという経験はないですか。あるいは、受け入れてくれたのは嬉しいけどそうじゃないんだよな……という受け取り方をされてしまったり。

私はどちらもあります。特に、会社で1on1を導入したころから、「こんなに話しているのになぜ伝わらないのだろう」と苦悩する毎日でした。

結論から言ってしまうと、これは「答えを先に言ってしまっている」ことが原因です。

先輩や上司の立場から、部下や後輩に答えを示してあげるのは当たり前ではないのか?と思われるかもしれません。でもそれが一番やってはいけないことなんです。

上司やマネージャーがするべきは、助言ではなく信頼なのです。今回は、なぜ助言してはいけないのか、そしてどうやって部下を信頼していくか、というマインドについて解説します。

部下の成長を促すために助言してはいけない理由

まずは、なぜ助言することが成長に繋がらないのかについて解説します。

優しい上司ほど親切に助言してしまいがち

私も会社員時代に、部下を持っていたころはついついアドバイスをしてしまっていました。それが「いい上司」だと思っていましたし、自分で言うのも何ですが、そのころの私は周りからの評価も決して悪くありませんでした。

しかし、そうやってアドバイスした内容はなかなか部下に伝わらず、あるいはその場では伝わっていても、定着しないことがほとんど。そんなときに気づきを与えてくれたのは、「自己効力感」というキーワードでした。

助言は「気づき」を奪ってしまう

そもそも、答えを押し付けることの何がいけないのでしょう。助言をする側からすれば、良かれと思って伝えたことの何が悪いのか、よくわからないかもしれません。

しかしこれは割とシンプルな話で、他人が伝えるより本人が気づいたほうが得だからなんです。

「宿題をやりなさい」と言われて、「今やろうと思っていたのに逆にやる気がなくなった」というケースは枚挙に暇がないですが、それに対して、自分で「勉強しなきゃ」と思った時には、本人も驚くくらいの集中力を発揮するのが人間です。

この集中力を支えるのが自己効力感です。 自己効力感とは読んで字のごとく、「自分が効果的なことをした」という実感のことなのですが、この自己効力感を高めるためには「自分から気づく」ことが必要です。

与えるのは答えでなく「気づくためのきっかけ」

宿題の例をみれば分かる通り、人間は答えを与えると反発してしまいます。そこで、「自分で答えにたどり着くためのきっかけ」を与えるくらいがちょうどいいんです。

たとえば私は業務で、部下とマンツーマンで話し合う1on1という制度が導入されたことをきっかけに、「自分にはマネジメントスキルが足りていないな」と感じるようになりました。

以来、マネジメントに関する記事や書籍をよく読むようになりました。マネジメントに興味を持った状態の私は、それ以前の私だったら間違いなくめんどくさがっていたであろう研修などにも喜んで向かいました。

これを子供の勉強などに置き換えるなら、勉強をしてテストで良い点を取ってほしいなら、勉強から始めるのではなくまずテストを受けてみてもらうことから始めましょう。そして、今の学力では良い点が取れないことに気付いてもらうんです。

そうすればあとは、自分から勝手に勉強するようになるでしょう。

部下の成長を促すための心構え

続いて、どうすれば部下や子供を信頼していくことができるかを考えていきます。

きっかけに対してどう行動するかは相手次第である

さきほどのテスト勉強の例に対して、「いやいやそんなうまく行くわけがない」と思われた方もいるしれません。しかし、それは当たり前です。

私たちが与えることができるのはあくまでもきっかけであって、それに対して何を思いどう行動するかはその人に委ねられています。ここが理解できていないと、本人は優しくしているつもりがただのお節介な人になってしまいかねません。

あなたが言った通り・思った通りに部下を動かそうとするのをやめましょう

能力の低さは仕事を任せられない言い訳にはならない

自分の助言なしで仕事を任せられるわけがない、と思われた方は、部下の能力の低さを言い訳にするのをやめましょう。

部下に仕事を任せられないのだとしたら、それは部下の能力が足りないのでもなければもちろん「助言」や「アドバイス」が足りないのでもなく、単に分かりやすい研修やマニュアルが整備されていないことが問題です。

そもそも能力の高い部下にしか仕事を任せられないのだとしたら、それはマネージャーの職務怠慢と心得ましょう。

責任を取ることはマネージャーとして当たり前の職務

部下が失敗してしまったときが怖い、という方は、あなた自身の失敗経験を思い出しましょう。あるいは失敗経験でなくても構わないので、あなたが部下の立場であったときを思い出してください。

上司が「お前が失敗したときの責任を取るのが怖い」と言うチームで、果たして働きたいでしょうか。上司にとって、部下の責任を取ることは当たり前の職務です。

もしもそれが嫌だというのなら、上席者のポジションを早く譲りましょう。上司が責任を取るのを恐れている職場で仕事をしなければいけない部下の立場になってあげてください

失敗したときの部下のケアまで考えなくていい

失敗を恐れるのは部下のためでもある、という方は、部下に気を使うのをやめてください。それこそが信頼できていない状態です。

あなたは部下に、失敗したときの心のケアまで頼まれましたか?上司が取るべき責任は、職務上での責任であって、個人的な問題まで責任を負う必要はありません。というか、それこそお節介です。仮に直接頼まれていたとしても、それを請け負う「責任」はありません。

そのお節介さは、いわば子離れできていない親のような状態と言えるでしょう。成人した子どもが転職するときや結婚するときに、はたまた友達付き合いなどにいちいち口出ししているようなものです。

無責任に放っておいて、たまに道具を渡すくらいでいい

その人に本当に成長してほしいなら、とにかく放っておきましょう。そして助言を求められたときには押し付けるのではなく、「こんな手もあるかもね」と材料を渡してあげたり、「こういう考え方もあるよ」と道具を渡してあげればいいんです。

もちろんそう簡単にできることではありません。子供に包丁を持たせるのは怖いと思います。だからといって、「包丁で手を切らないように包丁を渡さない」のでは、子供は成長することができません

そうではなくて、「包丁で手を切ってもいいように救急箱を用意しておく」んです。

無責任に信頼できる場を作って、失敗をさせてあげて、はじめて人は、自ら成長するために動き出します。どうか、答えを押し付けずに見守る勇気を持ちましょう。

部下の成長を促す信頼されるマネージャーになるための注意点

信頼するイメージはなんとなく湧いてきたでしょうか。最後に、信頼されるマネージャーになるためにここだけは気を付けておいていただきたいという注意点を紹介します。

自分の正解は他人にとっての正解ではない

基本的に、自分が思う正解はほかの誰かにとっての正解にはなりません。そのことを忘れないようにしてください。

私たちの人生は一度しかないので、AとBという2つの選択肢があるとき、Aを選んだ人生とBを選んだ人生の両方を体験することはできません。当然です。そして体験できない以上、AよりもBが優れているとか、BよりもAがかっこいいとか、比較することが不可能なんですね。

それに対して答えを押し付けるということは、比較できないものに対して「私はAのほうがいいと思うよ」と言っているのに等しく、つまり前提が破綻した提案になっているわけです。

「それでも」という意見もあるでしょう。それでも、経験者がこれまで積み上げてきた方法やノウハウに則って仕事をすることは、確かに効率的かもしれません。

しかしそれでも、本人が「そのノウハウに従う」と決めない限りは、永遠に納得がいかないまま、ただやらされる仕事になっていってしまうのです。

あなたの意見はあなたが思うより影響力がある

「答えを押し付ける」問題のさらに根深い部分は、伝える関係性によっては、前提が破綻した提案になっているにも関わらず、権威勾配(より偉い人の言うことが正しく聞こえる傾向)によって、まるで唯一の正解のように聞こえてしまうということです。

それに対して反発できたとしても、「Aのほうがいいと言われたから反発してBにする」となった場合も結局、提案に強い影響を受けて行動が制限されてしまっています。

それぐらいあなたの意見には影響力があることを自覚しましょう。「そんなつもりではなかった」では済まないこともあります。パワハラとかセクハラとか、そういうリスクを恐れるのではなく、「あなたの気安い一言によって部下の将来を左右してしまうかもしれない」という重大さを認識するのです。

それだけでも、うかつな一言を発する頻度は減るのではないでしょうか。

自分の自信のなさを部下に押し付けるな

子供、部下、後輩など、「守りたい人」を持った人は、その人のためにも良かれと思ってなんやかやと口うるさく助言したくなってしまいます。

それは心配しているからこそで、相手のためを思えば多少の口うるささも仕方ない……とする風潮がありますが、これは大部分が嘘です。

心配している気持ちはほんとだったとしても、そこで助言をせずにいられないのは、自分に自信がないからではないでしょうか。少なくとも私はそうでした。「あなたが転んだとき、起こしてあげられる自信がないからせめて石につまづかないように……」という気持ちで助言していました。

でも、それを相手は喜ぶでしょうか。石につまづいたことで、道端に落とした何かに気づくかもしれません。あるいは、その一回は避けられても、二回、三回と今後立ちはだかる石は避けられないかもしれません。

あなたの自信のなさによって、「あなたの目の前では失敗を避けられた」としても、あなたが見ていないところでさらに大きな失敗をするかもしれません。それが取り返しのつく失敗ならまだよいですが、一度失敗を避けられた分、二度目は大きな失敗に繋がる可能性が高まります。

あなたの自信のなさが、部下を窮地に追いやることを自覚しましょう。

部下に一切期待しないこと

最後の注意点は、部下に期待をするな、というものです。期待された部下は、一時的に張り切って頑張ってくれるでしょう。しかし、その頑張りは長続きしません。なぜなら、はじめは「期待されていること」自体が原動力になりますが、いずれ期待と評価が釣り合わなくなるからです。

そのため最初は、期待を一切しないことから始めてください。そうすることで、「意外とこんなこともできるのか」という目線に変わります。あれもこれもできて当たり前、からスタートしてしまうと、なぜこんなこともできないのか、になってしまいがちなので注意しましょう。

反対に、最初はゼロからスタートした期待を、部下の能力や調子に合わせてコントロールしてあげることで、さらなる成長を促すこともできます。期待の大きさ、いわば期待値のコントロールは成長を促す上司にとって欠かせないスキルなのでしっかり押さえておいてくださいね。

まとめ

以上、部下の成長を促すために、上司やマネージャーができることについて解説しました。特にスタートアップ企業などでは、人員が不足していて十分なマネジメント経験がないままマネージャー職へと引き上げられる機会も多いと思います。

そういったとき、これらの心構えや注意点がインプットされているだけでも、かなり印象は違うはずです。またそんな若いマネージャーに関わる立場の人々も、ぜひ彼らがこうした認識もないままにマネージャーへ引き上げられていることを知ってあげてください。

マネジメントへの理解は双方からの歩み寄りに繋がり、お互いにとってさらなる成長を促してくれるはずです。

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